真向法体操の由来
真向法は生理学、体育学あるいは健康法として組み立てられたものではありません。
創始者・長井津先生は、福井県の勝鬘寺というお寺で生まれました。
幼少のときから商売で身を立てようと志し、上京して大倉組(現大成建設)の大倉喜八郎に仕えます。
もともと商才にたけていて、若くして成功し、財を築きました。
しかし、金もうけには熱心でしたが、いちばん大事な命もうけには、心の準備も体の用意もいっこうにありませんでした。忙しい毎日を送っていたある朝、42歳の時に脳溢血で倒れてしまいました。
しまった!と思った時は手遅れで、命は助かりましたが、お医者さんには不治を宣告されます。そして職を失い、希望を失い悶々と悲嘆に暮れていました。
そんなとき、仏縁というのか、ふっとお経を読む気になったそうです。こうして漫然と死を待つより、なんとかこのやりきれぬ心だけは救われたいと、いう気持ちからです。
幸い生家の勝鬘寺には「勝鬘経」というありがたいお経があります。これはお釈迦様が、仏弟子たちの夫人や一家眷族に説いた尊い教えです。
しかも、この教えを聞く仏弟子たちは、必ずお釈迦様の前で、腰を完全に2つ折りにして礼拝する、柔軟な姿を発見しました。1つは座礼の"頭面接足礼"であり、もう1つは立礼の"五体投地礼"です。これを見つけた創始者は、自分も仏典に学ぶには、仏弟子たちと同じように礼をしなければならないと考え、そして自分の心だけでなく、体も硬化しきっている事に驚きました。
それからお経を読むのをやめ、この腰を屈伸する礼拝体操というべき謙虚な"お辞儀"の練習を一生懸命はじめることになりました。そもそもこれが真向法体操の原型であり、はじまりなのです。
石の上にも三年、硬かった腰が柔らかに屈伸できるようになると、不自由だった体が、次第に元どおりに動くと同時に、以前にも増して健康になったというわけです。この事実は、偶然でもなければ奇跡でもありません。
もともと私たちの体には、自然良能といって健康になろうとする力が備わっているからです。硬い腰や関節が屈伸性を回復し、萎縮していた筋肉・血管・神経が、本来の柔らかさをとり戻すにしたがって、その力が再開発されただけです。
いまでいう"リハビリテーション"に自助努力で成功したわけです。
こうして真向法体操は誕生したのです。